婦人科は女性特有の病気や症状を診察するスペシャリスト

婦人科は、妊娠や出産だけでなく、生理痛やオリモノの異常などの女性特有の症状や病気を診る診療科で、10代から70代まで幅広い年齢層の女性が受診しています。婦人科=内診(性器の検査)というイメージが強く、婦人科の受診を躊躇させる原因となっていますが、必ず内診を行うわけではありませんし、本人の意思に反して行うこともありません。まずは医師に相談してみましょう。

診察を受ける患者

婦人科を受診したほうがいいかも、と思ってから実際に受診を決断するまでには、時間がかかることも少なくありません。もし時間的に余裕があるのならば、基礎体温を測っておくと医師の診断の際に役立ちます。また、気になる症状や月経周期、最終月経、初経の年齢はあらかじめメモにとっておきましょう。

一般的に婦人科の受診は、月経時は避けた方がいいとされていますが、それはあくまでも理想です。月経痛が我慢できない、突然の下腹部痛などの症状が現れた時は時期を選ばずに受診しましょう。

婦人科を受診する際の服装ですが、下腹部痛などで病気が考えられるときは、下着を脱いで検査を受けることになるので、スカートがよいでしょう。ふわっとしたスカートならば下着を脱いでも下半身を覆うことができます。病気以外の相談などではパンツでも問題ありません。

婦人科で受付を済ませたら、問診票に記入し、それをもとに医師による診察を受けます。そして、医師が必要と判断した場合には内診が行われます。内診とは性器の視診、触診のことで、膣に入れた指と腹部の上からあてた指で子宮や卵巣の形、大きさ、痛みの有無などを調べます。

内診台には、医師との間にカーテンが引いてあります。カーテンを開けていると医師と顔を合わせるのが恥ずかしい人もいれば、しまっているとかえって不安感を覚える人もいるため、患者さんさんの希望により開閉してもらえます。

問診も内診も病気の有無を診断するうえで大切ですが、内診は全員に行うわけではありません。内診に抵抗のある人、セックスの経験がない人はお腹の上から超音波検査を行うことで子宮や卵巣の情報を得ることができます。

大人や未成年でもセックスの経験がある女性は、内診や経膣超音波検査(膣に細い機械を挿入して、内部から子宮や卵巣の大きさや構造を撮影します)を行います。また、必要に応じて、子宮がんの検査や膣分泌液の採取、血液検査、MRIなどの精密検査が実施されることもあります。

婦人科は決して成人女性だけが受診する診療科ではありません。中学生や高校生の女の子で、修学旅行や受験、スポーツの試合に生理が重なりそうなので、「生理をずらしたい」という理由で婦人科に相談にやってくることも多いです。前もって生理と重なりそうなことが予測できるなら、女性ホルモンの薬で生理をコントロールすることができます。しかし、初めての場合は副作用がでないとも限らないので、早目(1~2か月前)に保護者と一緒に婦人科を受診しましょう。

また我慢できないほどの生理痛で受診する10代の女の子も増えています。10代の生理痛の原因として多いのは、子宮の発育が未熟なため経血の通り道が狭いため、経血が排出される際に痛みが生じる場合や、排卵で分泌されるプロスタグランジンという物質によって子宮が収縮して、痛みを起こすケースです。

病気以外の生理痛を和らげるためには冷やさないなどの対処も必要ですが、婦人科で鎮痛剤を処方してもらうこともできます。「副作用が怖い」や「依存体質になりそう」などの理由で鎮痛剤に拒否感を示す方も少なくありませんが、用量や用法を守って月に1~2日ほど服用するだけですので問題ありません。毎月生理痛を我慢して、日常生活に支障をきたしてしまうよりも、鎮痛剤で痛みを解消することが大切です。

生理痛は生理が始まってから徐々に強くなるので、生理が始まったらすぐに鎮痛剤を服用するのがポイントです。飲み薬は全身に作用するまで時間がかかるので、本格的な生理痛が出てから薬を飲んでも、硬化を実感できるまで時間がかかります。鎮痛剤は胃の粘膜が荒れるという副作用があるので、空腹時は何かを食べてから飲むようにしましょう。

婦人科の受診が必要と判断される症状とは?

女性は初経~生理~妊娠・出産~閉経と、婦人科の医師とのつきあいが長い期間にわたって続きますので、近所のクリニックに相性の良いかかりつけ医を見つけて、健康管理に役立てましょう。

生理の状態は健康のバロメーター

また、女性の体はホルモンの変動が激しいため、体調も大きく変化します。その一方で子宮筋腫や子宮頸がんなどの婦人科特有の病気には初期の自覚症状が無いものも少なくありません。年に1回は婦人科で検診を受けるようにするとよいでしょう。

おりものの色・臭い・量、それに生理(月経)の量・周期・痛みなどには個人差があるため、何をもって婦人科の受診が必要な異常とするかは一概には言えませんが、次のような症状があった場合は、なるべく早く婦人科で医師に診てもらうようにしましょう。

生理が正常の範囲から大きく外れている
生理の周期日数(生理が始まって、次の生理が始まるまでの日数)は25~38日が正常の範囲とされています。周期は毎回一定である必要はなく、±6日以内の変動であれば問題ありません。しかし大きく外れる場合は、排卵がないなど、何らかの異常が疑われます。

生理の様子が今までと違う
生理の量・周期・日数・痛み・経血の性状がこれまでと違う場合は、病気が原因の可能性があります。また、無月経のはじまりであることもあります。このような場合は、生理中であっても受診しましょう。

生理がこない
来るはずの生理が2回来ないときも同様です。妊娠している可能性があるときには、もっと早く受診しましょう(産科・産婦人科でもよい)。生理予定日から2週間過ぎても生理がないなら、妊娠している可能性が高くなります。

オリモノがいつもと違う
排卵が近づくと乳白色からクリーム色の少し甘酸っぱいオリモノがあるのは、普通です。また、生理の前もおりものが多くなり、固まりがでることがありますが、これも問題ありません。

しかし、それ以外の時期におりものが増えたり、黄色や緑色、茶色などの普段とは違う、あるいはヨーグルトやカッテージチーズのような形状のボロボロした感じのおりものが出るなどした場合、細菌性膣炎から性病(膣カンジダ症や膣トリコモナス症など)の可能性がります。

おりもののほかに下腹部痛がある場合は、クラミジアや淋病による卵管炎や卵巣炎なども考えられます。

下腹部痛がある、しこりがある
いつもの生理痛や便秘・下痢以外で下腹部痛があるときは、病気が隠れている可能性があります。しこりがあるときは、子宮がんや大腸がん、子宮筋腫の疑いがあります。

外陰部がかゆい、痛みがある
炎症や潰瘍を起こしていたり、膣カンジダ症や膣トリコモナス症などの性病に感染していることが考えられます。

不正出血がある
生理以外の出血はすべて「不正出血」となります。排卵時に色々なホルモン、特にエストロゲンの変動が激しくなって出血がおこることがあります。これは「中間期出血」と呼ばれるもので、健康な女性でも珍しくないので、特に心配いりません。

しかし、子宮頸管ポリープ、子宮筋腫、子宮内膜症、膣炎などの病気が原因で不正出血を起こしていることもあり注意が必要です。中間期出血と病気が原因の出血は自分で判断すると危険です。不正出血があるときは必ず婦人科を受診しましょう。

排尿痛がある、尿の様子が違う
頻尿や排尿時の痛み、尿が濁っていたり、茶褐色をしているときは、膀胱炎や尿道炎の疑いがあります。子宮筋腫や子宮内膜症が隠れていることもあります。

若い女性に広がる代表的なSTD(性感染症)

セックスで感染する病気の総称を、「性感染症」(STD:Sexually Transmitted Diseases)といいます。近年はSTDに関する知識が乏しい若い世代にコンドームを使用しない無防備なセックス、類似性行為(オーラルセックスなど)が広がっているため、その患者数は増加傾向にあります。

不妊症の原因となる性病

STDは男性よりも女性の方が感染しやすく、特に10代後半から20代前半では放置すると不妊の原因にもなるクラミジア感染症が流行しています。STDには自覚症状が現れにくいものが多く、本人が気づかないうちに感染し、パートナーも感染させてしまっているケースも少なくありません。

クラミジア感染症も、かつてはオリモノの変化、下腹部痛などの症状が出やすいとされてきましたが、STD全体が無症候化している現在ではクラミジアに感染した女性の8割は無症状とされています。感染に気付きにくいということは、治療の機会がないまま、感染が子宮頸部から子宮内部、卵巣、腹膜などに拡大することを意味します。その結果、不妊症の原因となったり、出産時に産道を通じて赤ちゃんが感染してしまうリスクがあります。

性器の痛みや痒み、水ぶくれ、潰瘍、不正出血(生理以外の性器からの出血)など、気になる症状があるときは、躊躇しないで婦人科で診察を受けましょう。パートナー間でSTDを移しあう(ピンポン感染)ことを防ぐためにも、パートナーも一緒に検査をして、治療をすることが重要です。

性器クラミジア感染症(潜伏期間1~3週間):女性はオリモノが少し増える程度で、ほとんどのケースで症状はありません。不正出血、軽い下腹部痛、腹膜炎を起ことすこともあります。男性では尿道のかゆみ、膿が出る、排尿痛などの痛みが現れます。治療にはジスロマック(アジスロマイシン)などの抗菌剤が使用されます。

性器ヘルペス(潜伏期間2~10日):性器やその周囲に水ぶくれや潰瘍ができ、痛みを生じます。女性は特に痛みが強く表れる傾向にあります。治療にはバルトレックス錠500(バラシクロビル塩酸塩)などの抗ウイルス剤が使用されますが、免疫力が低下すると神経節に潜伏していたウイルスが活動を活発化して、何度も再発します。

尖圭コンジローマ(3か月程度):HPV(ヒトパピローマウイルス)の6型と11型に感染することで、性器や肛門周辺に米粒大のイボがたくさんできます。たくさんできたイボはカリフラワーに似ており、先端は鶏のトサカのように尖っているのが大きな特徴です。従来、尖圭コンジローマの治療は外科的切除が中心だったため、傷跡が残るという問題がありましたが、現在はベセルナクリーム5%(イミキモド5%クリーム)という軟膏が治療の第一選択肢となり、患者さんの負担は大きく軽減されました。

梅毒(潜伏期間3~4週間):病原微生物の梅毒トレポネーマに感染してから3週間ほど過ぎると、性器や足の付け根に痛みを伴わないしこりができます。感染から3か月ほど経つと全身に赤い斑点が現れます。特効薬のペニシリンの開発により、一度は激減した梅毒ですが、2010年から再び増加傾向に転じており、2015年には過去最高の感染者数を記録しました。

HIV感染症/エイズ(潜伏期間数か月~10年):感染初期は、症状はほとんどありません。HIVによって免疫が破壊されると、多彩な症状が現れ、さらに進行すると死に至ることもあります。先進国の中で日本だけが感染者が増加しています。